ニューミュージックとは、都会的な情景を織り交ぜたポップ調のサウンドを基調とするシンガーソングライターによる作品群である。主として、1970年代から1980年代にかけての日本のポピュラー音楽の一部に対して使われた名称。ニュー・ミュージックとも表記される。広辞苑にもニューミュージックという呼称は掲載されている。
この言葉の由来は明確ではないが、あるレコード会社が使用を始めたとする説(あるアルバムの帯に記載されたとする説、たとえば、猫のアルバム)、音楽評論家(三橋一夫とも言われているが不明)が使用を始めたとする説などがある。対象として、1970年代初頭の音楽を含むが、実際に、この言葉が盛んに使われるようになったのは、1970年代半ば以降である。
なお、一部には、雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン」がもとになっているとする説もあり、関係ないとは断言できないが、この雑誌は、洋楽中心の雑誌であり、この雑誌の存在が、ニューミュージックの範囲についての混乱をかえって助長したという面は否めない。
もともとは、従来のフォークとも異なり、かといって歌謡曲(主としてアイドル歌謡曲)とも異なる音楽を意味するものであった。すなわち、フォークをルーツとしながら、より洗練され、それでもなお、歌謡曲とは違うという意味合いで使われた。しかし、この言葉が実際の使用場面でいろいろな意味で使われたため、現在では、その境界(どのアーティストのどの作品を意味するか)が極めてあいまいになっている。
ただ、メッセージ性の強いフォークやハードロック系は、一般に含まないとされることが多い。なお、大瀧詠一、山下達郎などのはっぴいえんど・ナイアガラ系のミュージシャンについては、ニューミュージックに含める場合と含めない場合があり、いずれにすべきなのかについては、あまり議論はなされていない。
ニューミュージックの始まりは、おおむね、1972年ごろ、といわれている。具体的には、1972年の
吉田拓郎「結婚しようよ」
井上陽水「傘がない」
荒井由実「返事はいらない」
そして、1973年の
かぐや姫「神田川」
などを、始まりとすることが多い。
曲的には、従来のフォークが、例えばギター1本で、曲よりも詞を重視する傾向が強かったのに対して、ニューミュージックは、より楽曲を重視し、編曲家やスタジオ・ミュージシャンが主体となって、複雑な音楽を作ることが多くなっていった。かといって、当時の歌謡曲のように、歌手が「与えられた曲を歌う」というようなことは少なく、ほとんどの場合、シンガーソングライターであり、自分で作曲をしていた。その意味で、歌謡曲とは一線を画すということが、本来のニューミュージックの意味には内在されていたといえる。
詞的には、従来のフォークに比べると、メッセージ性や社会性が薄れ、個人的な内容になり、特に、恋人とのふたりの関係に重点を置いたものが多くなっている。
なお、ニューミュージックの歌詞においては、男性歌手が女言葉で歌うという例が散見される。例えば、上記の「神田川」がそうであり、風「22歳の別れ」もそうである。その他、松山千春、長渕剛(初期)、堀江淳など、そのような作品を残したアーティストは枚挙にいとまがない。また、さだまさしの「秋桜」のような特殊な例(曲を提供した相手が女性(山口百恵)であったが、のちセルフカバーをした)もある。これは、ロックでは考えにくいことであり、ポップスや初期のフォークでもあまり例はない(シャ乱Qのような例外もある)。一方、演歌・ムード歌謡においては多数例がある。
一方、その終わりはあいまいで、1980年代中ごろには終わっていたとする説、1980年代末までとする説、1990年代まで一部は続いていたとする説など、様々である。ただ、そのピークは、おおむね、1970年代後半とされている。
ニューミュージックを、
1970年代前半(吉田拓郎・井上陽水・小椋佳・荒井由実・かぐや姫・五輪真弓など)
1970年代後半(中島みゆき・大塚博堂・来生たかお・ツイスト・ゴダイゴ・アリス・松山千春・さだまさし・八神純子・久保田早紀・竹内まりやなど)
1980年代(以降)(五十嵐浩晃など)
の3つに時期区分する考え方もある。ただし上記の歌手の区分には大きな疑問も存在し得る。例えば、1970年代後半に挙げられた歌手やグループの多くは1980年代になっても人気を維持しており、例えば中島みゆきは2000年代に入ってからも『地上の星』でオリコンチャート1位入りを果たしている。また久保田早紀はむしろ1980年になってから人気を得たと言われている。アーティスト側でも自らの音楽を「ニューミュージック」と規定した者は殆どいないといってよく(松任谷由実は自らのベストアルバムのタイトルをドイツ語で「新しい音楽」を意味する『Neue Musik』としているが)、例えばさだまさしは一貫して自分を「フォーク歌手」としている。
1980年以降、シティ・ポップス、和製ポップス、J-POPなどの呼称が、ニューミュージックと厳密には同じでないが、似たような範囲の音楽を意味して使われるようになり、特に、J-POPが一般に過去の作品も含めてかなり広い音楽を対象として含めるという事情もあり、その結果からか、ニューミュージックという言葉は、現在の音楽に対してはあまり使われない呼称となっている。
他の音楽ジャンルとの関係を考えると、一般には、日本のフォークがリズムやテンポがよく、しばしば明るい曲調になるという意味で洗練されたもの(いい意味とは限らない)をニューミュージックと呼び、さらにリズムやテンポがよく、明るい曲調になるという意味でより洗練されたもの(アメリカ化というべきか。やはり、いい意味とは限らない)を(狭義の)ポップスと呼ぶ、ということが言えるという意見もある。
また、J-POPは、一般に(アイドル)歌謡曲も含み、アーティストがシンガーソングライターであることはまったく問わない。これに対して、ニューミュージックは、歌謡曲ではないことが本来の基本であり、シンガーソングライターであることを、より重視する。具体例を挙げると、モーニング娘。やSMAPは、J-POPに入りうるが、山口百恵や西城秀樹は、ニューミュージックには入らない。ただし、この区別も、絶対的なものではない。歌謡曲とニューミュージックとJ-POPの境界線自体が定かではなく、例えば太田裕美や渡辺真知子はどれに属するのかは論者によってまちまちになるだろうと考えられ、また分類すること自体に意味があるのかどうかという意見もあり得る。
ニューミュージックであるかどうかの判断をする際に、1970年代後半にある程度ヒットしていることを条件とする考え方もある。すなわち、音楽的な面(楽曲)を見てニューミュージックといえそうであっても、1970年代後半にある程度のヒットとなっていない場合(ヒットを出していないアーティストの場合)には、ニューミュージックとは呼ばないという立場である。
ニューミュージックについては、そのような名前を付けて、レコード会社、レコード店、TV・ラジオの番組等が積極的に使用したことにより、フォークを大衆化させ、人気を高め、よりすそ野を広げたという点において評価される一方で、フォークを産業化させた(若者の音楽文化を、レコード会社などのメディア産業が取り込み、金儲けのためのビジネスにしてしまった)という面において批判されることが多い。したがって、ニューミュージックに属するとされるミュージシャンは、ある意味で、この点についての加害者でもあり、被害者でもあるといえる。ただ、このことは、ニューミュージックだけではなく、その後のJ-POPでも同じであり、ニューミュージックは、その始まりに過ぎない。
(注1)2004年現在、「ニューミュージック」という言葉はほとんど使われなくなっていることから、個々のニューミュージックのアーティストがいつニューミュージックでなくなったのか、という議論がある。例えば、松任谷由実を例にとると、「松任谷由実の場合、いつまでをニューミュージックと呼べるか、いつからニューミュージックでなくなったか」という議論である。いろいろな意見があるが、例えば、アルバム『SURF&SNOW』(1980年)までとする説、ミニアルバム『水の中のASIAへ』(1981年)までとする説、ほぼ同じ時期であるが、シングル『守ってあげたい』(1981年)以降をニューミュージックでないとする説などが有力であり、いずれも、1980年代初期を境としていることが多い。これに対して、単に、ニューミュージックという言葉が使われなくなったという用語の問題であり、個々のアーティストについて、いつまでがニューミュージックか、という問題の立て方そのものがナンセンスである、とする考え方もある。
(注2)ニューミュージックという呼び方は、「音楽・楽曲」を示す用語であるが、現実には、個々のアーティストに引っ張られることがほとんどである。典型的な「ニューミュージックのアーティスト」である松任谷由実を例にとると、1970年代後半の時期に、松任谷由実がアイドル歌手に曲を提供していたとしても、そのアイドル歌手が歌うその曲をニューミュージックと呼ぶことはない。ところが、同じ曲を、松任谷由実が歌うとしたら、とたんにニューミュージックと呼ばれるであろう。すなわち、同じ曲であっても、歌う者により、ニューミュージックになったり、ニューミュージックでなくなったりするということがありうるわけである。また、さだまさしは1980年代に入ってからむしろ社会的なテーマを扱う作品が増えている(さだ本人は一貫して自らを「フォーク」に位置付けている)。
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